第255回「歴史と人間」研究会

日時: 2017年9月16日(土)14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 見市 雅俊氏

タイトル: 「ほどよい近代、もしくは跛行的近代―スコットランド・ナショナリスト、トム・ネアンのイギリス史論をめぐって」
 

要旨:
 今回の報告は、2015年12月の「歴史と人間」研究会シンポジウム、「戦後西洋史学をふり返る」における私の報告、「コミンテルンから路地裏へ」の続編である。マルクス主義から出発し、のちにナショナリズムの研究とスコットランド独立運動の実践で知られるようになったトム・ネアン(Tom Nairn)に焦点を合せる。
 ネアン、および日本で早くからその名前が知られているペリー・アンダーソン(Perry Anderson)の二人は、1960年代、「オールド・ニュー・レフト」に抗しつつ登場した「ニュー・ニュー・レフト」である。前者の大御所であるE.P.トムスンの逆鱗にふれたことでもよく知られている。簡単に言えば、若き二人がイギリスの「後進性」を強調し、それが明らかにトムスンの「愛国心」を刺激したのであった。
 ネアンの主著、『ブリテン解体』と『蠱惑のガラス』は大きな反響をよんだ。その内容は一言でいえば、スコットランド独立を鮮明に掲げるナショナリトによる、情け容赦のない、イギリス解剖の書である。相方のアンダーソンは、そのスタイルも文体も「グローバル」であり、またアカデミックで、「無色」であるのに対して、ネアンのイギリス論はナショナリストである分だけ「色がつく」ことになり、また「毒気」を含むことにもなり、たいへんスリリングな内容となっている。
 ここでは、ネアン説の中味をアンダーソンの議論も交えて紹介し、結論部分では、ジョージ・オーウェルの第二次世界大戦中の愛国心高揚の著述内容と絡ませて、この島国の近代化の「特殊性」ということについて考えてみることにする。

 

* 次回は10月28日、安藤香織氏によるご報告の予定です。詳細が決まり次第、改めてご案内申し上げます。


第254回「歴史と人間」研究会

日時: 2017年7月1日(土)14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 森 宜人氏

タイトル: 「近現代ヨーロッパ都市史における『長い20世紀』」

要旨:
 近現代ヨーロッパ都市史における近年の重要な変化として、「長い19世紀」に代わって「長い20世紀」を対象とする研究が着実に増加しつつある点を指摘することができる。また、これと軌を一にして、「新文化史的アプローチ」や、トランスナショナルな比較史が方法論上の主流となりつつある。こうした潮流を把握する上では、既存の研究成果を広範に駆使した通史が1つの有用な手がかりとなる。管見の限りでは、近年出版された複数の通史のなかで、上述の方法論を反映させつつ20世紀都市史について最もまとまった概観を提示しているのは、F. レンガーが2013年に上梓した『モデルネのメトロポリス―1850年以降のヨーロッパ都市史―』(Friedrich Lenger, Metropole der Moderne. Eine europäische Stadtgeschichte seit 1850, München 2013)である。
 同書では、分析対象の1850年代〜21世紀初頭が次の3局面に区分される。(1) 1850年代〜19世紀末の「自由主義市民のモダニティ」、(2)19世紀末〜1960年代の「オーガナイズド・モダニティ」、(3)1970年代以降の「ポスト・モダン」。この時期区分は、自由と自律性を基調とするモダニティの言説によって構築される社会的制度・慣習が、その時々の歴史的コンテクストにおいて多義性を帯びてきたことに着目する歴史社会学者P. ヴァグナーのモダニティ論に依拠したものである。その中核をなす「オーガナイズド・モダニティ」には、福祉国家およびファシズム体制だけでなく社会主義体制も含まれるため、レンガーの議論でも、ロシアを含む東欧諸都市も分析対象となる。そして、このことは、「ヨーロッパ都市とは何か」というM. ヴェーバー以来の根源的な問いに逢着することとなる。
 このように『モデルネのメトロポリス』では、「オーガナイズド・モダニティ」の形成・展開から「ポスト・モダン」へといたる都市社会の変化を経糸として、また、「ヨーロッパ都市」とは何かという視点による北西ヨーロッパ諸都市と東欧・ロシアおよび南欧諸都市との比較を緯糸として、「長い20世紀」のヨーロッパ都市史が織りなされる。その歴史像は、経済史や、社会史、人口史などの実態分析はもとより、「新文化史」的アプローチによる文芸批評や、視覚表象、造形芸術、集合的記憶などをめぐる言説分析によって得られた知見も豊富に反映させた多彩なモザイク模様を呈している。本報告では、このようなレンガーの「長い20世紀」都市史像を、近年の都市史研究の重要なトピックである「都市とモダニティ」、「都市ガバナンス」、「都市空間と公共圏」の3つの論点に即して検討し、今後のヨーロッパ都市史研究のあり方について考える糸口としたい。

 

* 次回は9月、見市雅俊氏によるご報告の予定です。日程等、詳細が決まり次第、改めてご案内申し上げます。


第253回「歴史と人間」研究会&「最後の宴」

研究会
日時: 2017年4月23日(日)14時より

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 梅原 秀元氏

タイトル: 「19世紀末から20世紀初頭のドイツにおける学校衛生の展開―デュッセルドルフ市を例に」

要旨:
 近年、社会福祉、医療・保健衛生といった領域をめぐる歴史研究が活況を呈している。そこでは、例えば、これらの領域でのサービスの担い手について、国家や地域行政機関などの公的な担い手だけではなく、キリスト教系の団体や民間の人々による団体などのヴォランタリーな団体がこの領域に果たした役割や意義に光が当てられている。さらには、これらの担い手がどのような関係にあったのか―協力し合っていたのか、競合していたのか、特に関係を持たずに別個にやっていたのか―についても議論されている。
 こうした研究状況の中で、最近では、学校を拠点とした地域の衛生ネットワークや教育支援のための事業についても研究が行われている。本報告が対象とするドイツにおいても、この領域は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて確立・展開した学校衛生が大きな意味を持っていた。しかし、ドイツの学校衛生については、日本はもとよりドイツにおいても十分研究されているとはいえない。そこで、本報告では、ある一つの都市―デュッセルドルフ市―を例に、19世紀末から20世紀初頭における学校衛生の展開を、とくに、身体の全般的な状態が良くない児童に対して行われた保健医療事業を中心に、未刊行史料や当時の刊行物といった史料をもとに素描する。この作業を通して、本報告では、衛生、教育、救貧、家族といった複数の領域が交錯する場―いわば社会の中間領域のような場―において、誰・どのような組織がどのような言説を使い、実際にどのような形で問題へとアプローチし、施策として実行したのかといった点を明らかにしたい。

 

* 5月は学会シーズンのため、お休みです。6月例会につきましては、改めてご連絡いたします。

 

「最後の宴」
 長年懇親会の場としてお世話になってきた海鮮呑屋日本橋さんが、国立駅前の再開発に伴い、今年の5月末をもって閉店することになりました。上記のとおり、5月は例会がお休みのため、4月例会後が日本橋さんでの「最後の宴」となります。皆様、奮ってご参加ください。「最後の宴」からのご参加も大歓迎です。
 なお、予約の都合上、「最後の宴」から参加される方はrekinin19920429(at)gmail.comまでご一報いただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。


第252回「歴史と人間」研究会

日時: 2017年3月26日(日)14時より

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 高野 麻子氏

コメンテーター: 勝 康裕氏

タイトル: 「生体認証技術による身体管理の歴史的変遷―個人を識別することの先に何があるのか」

要旨:生体認証技術(biometrics)とは、身体的・行動的特徴から個人を識別する技術であり、現在では指紋、静脈、虹彩、顔、声紋、歩容などが用いられている。生体認証技術の歴史は、19世紀末にイギリスの植民地であるインドで指紋法(指紋によって個人を識別する技術)が誕生したことに始まる。指紋を一度登録すれば、移動を繰り返しても、言葉が通じなくても、偽名や嘘をつこうとも、統治者は必要なときにいつでも個人の識別が可能になった。そしてこの技術は、帝国における統治の技法として地域的な差異を越えて伝播していった。本報告では、こうした生体認証技術の軌跡を、2016年にみすず書房より出版した拙著『指紋と近代―移動する身体の管理と統治の技法』をもとに辿っていく。そのうえでさらに、1980年代に手作業の時代からコンピュータの時代へと移行するなかで、生体認証技術による身体管理がどのような変容を遂げているのかについても考察する。19世紀末に誕生した技術は、21世紀を迎えた現代においても世界的に使用されているが、近年は明らかに個人を識別することをはるかに超えはじめている。近代的統治による秩序化の実践は、どこに向かっていくのだろうか。この大きな問いを、生体認証技術による身体管理の歴史的変遷を軸に考えていきたい。

 

なお、今回の例会では、高野さんのご高著『指紋と近代―移動する身体の管理と統治の技法』の編集に携われた勝さんから、企画が成り立つまでの経緯や編集過程などについてお話いただくことになっております。

 

* 次回は4月23日(日)梅原秀元氏によるご報告の予定です。

 


第251回「歴史と人間」研究会

日時: 2017年2月18日(土) 14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス職員集会所
 (キャンパス地図8番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 齊藤 豪大氏

タイトル: 「重商主義政策と水産資源変動―18世紀スウェーデンにおける漁業振興施策の展開―」

要旨:
 18世紀中葉にスウェーデン西部の沿岸に到来したニシンの魚群によって、スウェーデン水産経済、さらには北海・バルト海商業圏における水産経済構造は大きく変化していった。それまで同国にとって輸入品であった塩漬けニシンは、この水産資源変動によって、輸出品へと変化していった。
 この魚群到来の前から、スウェーデンでは水産業に対する振興施策が展開されており、水産業に対する支援は重商主義政策の観点から見て重要な問題であった。これまでにもスウェーデン重商主義政策に関する研究蓄積が十分にありながら、漁業振興施策の観点から検討した研究はわずかであった。また、漁業部門に対する具体的な支援策の展開過程に加えて、水産資源変動によってスウェーデンにおける漁業振興施策がどのように変化していったのかについても十分な議論がなされているとはいいがたい。
 本報告では、18世紀スウェーデンにおける漁業政策関係史料の分析を通じて、いかなる漁業政策が展開され、水産資源変動を通じて漁業支援策がどのように変化していったのかということを考察する。

 

* 次回は3月26日(日)高野 麻子氏によるご報告の予定です。

 


「歴史と人間」研究会2016年度シンポジウム(第250回例会)

西洋史をめぐる知の「共有」の変容―歴史マンガの隆盛に着目して―

 

日時: 2016年12月18日(日)14:00-17:45

 

場所: 一橋大学西キャンパス職員集会所
 (キャンパス地図8番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

 

プログラム:
趣旨説明(14:00-14:10)
佐藤 和哉(日本女子大学)

 

報告1(14:10-15:10)
渡辺 賢一郎(東洋大学)
「少女マンガで『叙述』される西洋史」

 

休憩(15:10-15:20)

 

報告2(15:20-16:20)
見市 雅俊(中央大学)
「日本における外来文化の『国産化』/『大衆化』―マンガ文化の歴史的背景をめぐって」

 

休憩(16:20-16:30)

 

全体討論(16:30-17:45)

 

忘年会(18:00-)

 

 日本の、西洋史をめぐる知の「共同体」的な環境が大きく変わろうとしています。これまでわが国では、西洋史は、そのほとんどの期間、「母国語」の枠組みのなかで研究され、学習され、その結果、日本人の平均的な西洋史の理解度は、他の非西洋諸国ではありえないほど高いものとなりました。しかるに、近年、一方では西洋史研究の「グローバル化」、厳密にいえば「欧米化」が進行し、他方では、情報化の進展にともなって知の「共有」のありようが全般に変化するなかで、かつてのように社会全体で共有される「教養」の重要な一部として西洋史を受容する風土がなくなりつつあるようにみうけられます。
 このように西洋史を取り巻く知的環境が変化するなかで、注目されるのが、とくに女性のマンガ家たちによる、史実をけっしてないがしろにしない、しかし、波乱万丈の、そして濃厚な内容の西洋歴史マンガの存在です。「ハイブラウ」な研究者からは無視されがちなこれらの作品群をどのように理解すればよいのか。「サブカル」として捨て置けばよいのか。あるいは、日本的な西洋史の展開として積極的に評価すべきなのか。これが今年度の、「歴史と人間」研究会のシンポジウムのテーマとなります。普段、なかなかお越しになれない方々も、是非ご参加ください。心よりお待ち申し上げます。
 なお、例年どおり、シンポジウム終了後には、同じ会場にて恒例の「大」忘年会(会費1,500円)を予定しております。こちらも奮ってご参加ください。

* 次回は2017年2月18日(土)齊藤豪大氏によるご報告の予定です。


歴史学会第41回大会・総会のご案内

 会員の夏目さんからのご依頼により、歴史学会第41回大会・総会のご案内を転送させていただきます。ご確認ください。

------<以下転送部分>------

日時:2016年12月4日(日)10時〜17時30分
場所:明治大学駿河台キャンパスグローバルフロント1階グローバルホール
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/suruga/access.html
会場費:一般500円 学生(院生以下)無料

《自由論題報告》10:00 〜 11:30
10:00 〜 10:30 見城光威 氏(前駒澤大学・宜蘭大学)
  「後晋石敬?政権考略 ─宋王朝成立過程史─」
10:30 〜 11:00 五味知子 氏(慶應義塾大学)
  「清代の告示文にみる庶民生活と地方官」
11:00 〜 11:30 松岡昌和 氏(一橋大学)
  「メディア・イベントとしての日本語普及
    ─日本占領下シンガポールにおけるメディア文化政策と日本化教育─」

《総会》11:30 〜 12:00

《シンポジウム》13:00 〜 17:30 植民地帝国と「大学」
13:00 〜 13:10 趣旨説明
13:10 〜 14:00 出島有紀子 氏(桜美林大学)
  「ヴィクトリア朝英国と英領インドの女子医学教育」
14:00 〜 14:50 広中一成 氏(愛知大学)
  「東亜同文書院の学校運営の実像
    ─ふたつの学生ストライキ事件から─」
14:50 〜 15:00 休憩
15:00 〜 15:50 通堂あゆみ 氏(武蔵高校)
  「京城帝国大学医学部専攻生制度からみる医師資格者の帝国内移動」
15:50 〜 16:10 岡田泰平 氏(静岡大学):コメント
16:10 〜 17:30 ディスカッション

《懇親会》18:00 〜 20:00
会場:アカデミーコモン1階 カフェ・パンセ
        懇親会費:4,500円
(懇親会参加希望の方は、事前に歴史学会事務局
rekigaku(at)yahoo.co.jpまで連絡をお願いします)


第249回「歴史と人間」研究会

日時: 2016年11月27日(日) 14時より

場所: 一橋大学西キャンパス職員集会所
 (キャンパス地図8番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 山口 みどり氏

タイトル: 「歌う聖職者たち、サープリスを着た女性たち、教会という劇場―19世紀イングランド国教会における音楽・聖職・ジェンダー」

要旨:
 演劇がタブー視されたヴィクトリア初期。しかし皮肉なことに「教会と劇場の間のつながり」は、このころイングランド国教会で強まり始めていた。オックスフォード運動の影響で、音楽を多用する唱詠聖餐式が教区教会でも再導入されると、カトリック的だとする反発にもかかわらず受聖餐者数の増加が報告された。教会堂は会衆の目を意識した「劇場」的なものに改装され、国教会の礼拝のための聖歌が整えられ、司祭やその家族は各地で聖歌隊を組織していった。 
 しかし、音楽の導入は会衆を楽しませ教会に引き付けた一方で、ヴィクトリア期の支配的なジェンダーや階級区分に混乱をもたらすこととなった。当時、女子教育において音楽は「ほとんど必修」であったのに対し、「男子教育の範疇にはほとんど入ってこな」(Nature, 1874)かったからである。唱詠礼拝は、整備されつつあった公教育や、アスレティシズム全盛の男子パブリックスクールにも波紋を広げ、さらには教区の娯楽にも影響を与えていった。女性がサープリスを着て内陣に座ってもよいのか? どうしたら少年たちを聖歌隊に呼び込めるか? 歌声の「訛り」の問題は? そして、歌える牧師を養成するにはどうすればよいのか? 音楽と、ジェンダー階級の振り分けは、「神聖」という要素によって再構成されていき、また「観客」としての会衆たちによって取捨選択されていった。

 

* 次回は12月18日(日)、恒例のシンポジウム&忘年会を予定しております。皆様、奮ってご参加ください。

 


第248回「歴史と人間」研究会

日時: 2016年10月29日(土) 14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 高見 純氏

タイトル: 「中世後期兄弟会の救貧―15世紀前半期ヴェネツィアの聖マルコ兄弟会」

要旨:
 本報告では、15世紀前半期ヴェネツィア社会において俗人宗教団体である兄弟会が担った救貧活動を考察する。1348年以降、西欧社会は数年おきに伝染病が流行する時代に突入した。当時西欧最大級の都市であったヴェネツィアも例外ではなく、病死による人口減少と農村からの人口補充を繰り返した。人口流動による地縁・血縁の希薄化と伝染病による社会不安は、具体的な社会救済の出現を要請し、教区を超えた全都市型大兄弟会の成長を促した。13世紀に生まれた4つの鞭打ち「苦行」団体(兄弟会)は、15世紀には「救済」団体へと変質し、都市公認の名誉ある団体として、その後数百年に渡って都市社会の救済の一端を担うことになった。
 報告では同団体の1つ聖マルコ兄弟会を取り上げ、1430年代の会計帳簿史料の分析から同団体の担った貧困救済の実態と、救済の構造を検証する。それによって、これまで16世紀を中心に語られてきた同団体の福祉的側面が、上記伝染病の社会不安の中で期待された「防貧」機関として、既に15世紀前半期にどこまで成立していたのか評価したい。


* 11月例会は山口みどり氏によるご報告の予定です。


第247回「歴史と人間」研究会

日時: 2016年9月17日(土)14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 東風谷 太一氏

タイトル: 「物の権利と醸造業―19世紀前半期ミュンヒェンにおけるビール・騒擾・共同性」

要旨: 本報告では、1840年代に2度にわたってミュンヒェンで起きたビールをめぐる騒擾の背景を検討したい。学史においては、すでにこの騒擾の具体的な経過や、担い手の社会階層(手工業職人および兵士)などが明らかにされており、主にモラル・エコノミーとの関連で考察されてきたといえる。その一方で、これらの成果が主題を異にする研究、たとえば手工業史や都市史と接合されることはほとんどないままとなっている。担い手の社会階層がわかっている以上、さらに、19世紀前半期がバイエルンにおける営業自由化、言葉を換えれば、領邦政府の主導下で市場競争経済の展開を急ごうとした時期であったことをも考慮するなら、国家・都市の権力が交錯する場としての都市共同体、および手工業者を取り巻く営業体制の変容といった視座をも含みこむ形で、騒擾についての考察がより深められなければならないだろう。この地点からこそ、騒擾の担い手たちのモラルがよりよく見えてくるのではないか、というのが本報告の問題意識である。そこで、さまざまな領域の先行研究を積極的に参照し、都市文書館の行政史料と突き合わせることで、騒擾の担い手たちの日常において何が起きていたのかをあらためて考えてみたい。その結果、本報告の主題にとって私的所有制の貫徹という問題が鍵であり、とりわけビール醸造業の営業権が近代的な所有の対象となっていく過程を通して、騒擾の背景をなす都市の共同性の変容が具体的に垣間見えてくるはずである。


* 10月例会は高見純氏によるご報告の予定です。

 



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研究会の概要、これまでの例会

今後の例会

<2018年>
11月17日 田村俊行氏
12月16日 シンポジウム・忘年会
3月    見市雅俊氏

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