第239回「歴史と人間」研究会

日時: 2015年11月14日(土)14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス職員集会所 *前回とは異なりますのでご注意ください。
 (キャンパス地図8番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 佐藤 和哉氏
タイトル: 「子ども向け翻訳書としての『ロビンソン漂流記』―南洋一郎を中心に―」

要旨:
 戦前から戦後にかけて、子ども向けの本の実作・翻訳(翻案)に腕を振るった南洋一郎(=池田宣政)(1893〜1980年)は、1938(昭和13)年に「大日本雄辯會講談社」から『ロビンソン漂流記』を出版する。この版は戦後、1946(昭和21)年、1950(昭和25)年にも少しずつ修正を加えながら出版されるが、戦前の翻案がデフォーの原作以上に色濃く持っていた植民地主義的・男性中心主義的性格は、戦後の出版においても保たれたままだった。その一方で、子ども向け物語の実作の経験に基づいて、南はロビンソンの性格づけに意を用い、少しでも親しみやすいキャラクターに作り替えていた。その成功の度合いは、戦後の翻案のなかに、南のアイディアを取り入れたものが散見されるところからも伺い知ることができる。
 同時期に南=池田がほかの出版社から出版した『ロビンソン』の物語にもこのような登場人物の性格付けは見られるものの、植民地主義的・男性中心主義的な再話のスタイルは取られていない。南が「池田宣政」として作家デビューしたのが同社発行の人気雑誌『少年倶楽部』においてであったことや、出版社によって翻案された『ロビンソン』の性格が異なることからすると、ここで問題としている『ロビンソン漂流記』の性格には、出版社の色彩が反映されていると思われる。
 以上を踏まえて、本報告では、まず南の『ロビンソン漂流記』の翻案のテクストに見られるいくつかの特徴的な点を指摘し、このテクスト特有の性質を確認する。次に、南の創作・翻案活動の主な場であった『少年倶楽部』について概観し、大日本雄弁会講談社という出版社の子ども向け図書出版物・出版事業のなかにこのテクストを位置づける。この作業を通じて、戦前・戦後の児童書出版というコンテクストのなかで『ロビンソン』がどのように受けとめられてきたのかを見ていきたい。
 日本における『ロビンソン』受容に関する研究のなかで、狭義の英文学研究の外では、社会経済史的な「近代的人間類型」としての見かたや、それに対するリアクションの影で、児童書としての側面が等閑視されてきた嫌いがある。昭和期を中心にこの受容のされかたを見ることで、『ロビンソン』というテクストの変容と受容に関する全体像を俯瞰する作業の一助としたい。
 

* 次回は12月19日(土)恒例のシンポジウム&大忘年会の予定です。詳細は近日中に配信いたします。



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