第270回「歴史と人間」研究会

◆日時: 2020年4月25日(土)14時より

 

 *新型コロナウィルスの影響により、直前に例会を中止・延期する可能性があります。

  ご迷惑をおかけしますが、ご承知おき願います。

 

◆場所: 一橋大学国立東キャンパス 第3研究館 3階 共用会議室

     キャンパス地図39番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/ campus/campus/index.html

 

◆報告: 上林 朋広氏 

   (一橋大学大学院社会学研究科ジュニア・フェロー(特任講師)、東京外国語大学AA研ジュニア・フェロー)

 

◆タイトル: 創られた「伝統」の浸透:ズールー語教科書の出版と歴史意識」

 

◆要旨:

 本報告は、1930年から50年にかけての南アフリカ連邦ナタール州(現クワズールー・ナタール州)のアフリカ人教育におけるズールー文学・歴史教育を分析することで、同期間のズールー・ナショナリズムの内容とその広がりを明らかにする。具体的には、学校教育で使用されたズールー語の教科書と、シラバス及び試験問題など教科書の読み方を規定したと考えられる史料を用いることで、主任原住民教育視学官であったダニエル・マック・マルコムを中心としたナタール州教育行政と保守的なズールー知識人の協力のもとで生み出されたズールー語の歴史叙述が、人種隔離政策と親和性を持つようにズールー・ナショナリズムを特定の形態へと導こうとする試みであったと主張する。

 20世紀前半におけるズールー語の歴史叙述の果たした役割については大きく分けて二つの立場がある。一つは、ズールー・エスニシティを強調した保守的知識人とアフリカ人統治に関わった白人行政官の協力体制に焦点を当て、彼らが人種隔離政策を正当化したという側面を強調する立場である。他方は、ズールー人の歴史叙述、特に歴史小説を分析対象として、植民地支配への抵抗の可能性を見出す立場である。前者の観点を打ち出したマークスの論文(Marks 1989)は、ナタール州のアフリカ人教員団体ズールー・ソサエティが、家父長的で植民地支配に融和的なズールー・エスニシティ観を提示したと主張する。しかし、その分析の射程は、アフリカ人統治行政とアフリカ人知識人の協力関係を対象とするにとどまっており、学校教育で使用された具体的なテキストを対象としているわけではない。一方で、文学研究者ピーターソン(Peterson 2012)に代表される後者の立場は、テキストの内容にのみ焦点を当て、それが学校教育で学生に特定の価値観を教えるために利用されたという側面を等閑視してきた。上記の研究動向に対して、本報告では、ズールー人の歴史について読み・書くという行為が、その共同体のあるべき姿を議論する公共圏を形成してきたというショニパ・モコエナの主張(Mokoena, 2009)を援用しつつ、ズールー語による歴史叙述への教育行政の介入の影響を分析する。具体的には、ズールー・ソサエティの史料、特に同協会の事務局長を務めたチャールズ・ムパンザとマルコムの間で交わされた書簡を検討することを通して、教室において学生がズールー語で執筆された教科書を読むという行為に、特定の社会的規範を教え込む役割が期待されていたことを明らかにする。

 

参考文献

Marks, Shula. 1989. “Patriotism, Patriarchy and Purity: Natal and the Politics of Zulu Ethnic Consciousness.” In The Creation of Tribalism in Southern Africa, edited by Leroy Vail, 215–40. Berkeley: University of California Press.

Mokoena, Hlonipha. 2009. “An Assembly of Readers: Magema Fuze and His Ilanga Lase Natal Readers.” Journal of Southern African Studies 35 (3): 595–607.

Peterson, Bhekizizwe. 2012. “Black Writers and the Historical Novel: 1907-1948.” In The Cambridge History of South African Literature, edited by David Attwell and Derek Attridge, African Edition, 291–307. Cambridge: Cambridge University Press.

 



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