「歴史と人間」研究会2018年度シンポジウム(第265回例会)

2018年度 歴史と人間研究会シンポジウム(第265回例会)のお知らせ

 

シンポジウム:ピアノ文化の東西比較

 

日時: 2018年12月16日(日)13時30分〜17時30分

場所: 一橋大学東キャンパス第三研究館3階研究会議室
 (キャンパス地図39番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

プログラム:
趣旨説明(13:30-13:40)見市雅俊(中央大学名誉教授)

報告1(13:40-14:25)本間千尋(慶應義塾大学準訪問研究員)
「日本の一般の人々によるピアノ文化受容」
 
報告2(14:25-15:10)松本彰(新潟大学名誉教授)
「鍵盤楽器の社会文化史ー「音律の世界史」と西洋近代」
  
コメント(15:10-15:40)小野塚知二(東京大学教授)
休憩(15:40-16:00)
全体討論(16:00-17:30)

 

 「歴史と人間」研究会は、これまで年末にさまざまなテーマでシンポジウムを開催してまいりましたが、今回は、ピアノを取り上げることにしました。

 明治以来、私たちの国は、西洋文明のピンからキリまで輸入してきましたが、振り返ってみれば、それはただの舶来物の移入ということではありませんでした。「創造」的な移入であり、場合によっては「本場」をしのぐ発展をみることもありました。ピアノ文化も、この極東の島国において西洋以上の成熟をみているのかもしれません。最初の報告者、本間氏には、そのような日本におけるピアノ文化の受容と展開についてお話しいただきます。 

 つぎに、西洋音楽史の文脈でみれば、私たちが今日、目にするようなピアノには、実は、長い前史がありました。もう一人の報告者、松本氏には、ピアノ以前の音楽の舞台を煌びやかに彩った、さまざまな鍵盤楽器についてお話しいただきます。そこで提起される重要な観点は、音楽の「合理化」という特殊西洋的な現象であり、マックス・ヴェーバーの音楽社会学における調律(音律)論がご報告のベースとなります。

 このように、ピアノの歴史を辿ることによって、ユーラシア大陸の西端と東端における文化のありようを解き明かし、ひいては、「近代」という時代そのものを問い直す。それが今回のシンポジウムの主要なテーマとなります。多くの方が参加され、活発な議論が交わされることを期待しております。

 

本間千尋「現代日本のピアノ文化」

 18世紀末〜19世紀前期に西欧で登場したピアノ文化は,近代家族の象徴であった.息子や娘の理想的な在り方が求められ,女子教育とピアノが結びつき,子女のピアノ教育熱を煽り立てた.明治期にピアノ文化が移入された日本においても,戦前のピアノ文化は19世紀西欧のそれと類似している.ピアノは日本の良妻賢母教育と直結するものではないが,女子教育振興の過程で普及した.

 しかしながら戦後日本におけるピアノ文化は,戦前とは異なった様相を示した.日本人のライフスタイルが多様化したと言われるように,日本のピアノ文化も多様化した.その契機は高度経済成長期の「ヤマハ音楽教室」と,1980年代以降の「ピティナコンペティション」であり,現在の日本では,西欧以上に成熟した日本特有のピアノ文化が創造されている.加えてそうした背景には複雑に絡み合った階級,家族,教育,ジェンダー等に関する日本社会特有の事情が存在する.そのためこうした文脈においても検討しなければ,日本社会における真の意味でのピアノ文化の様相を明らかにすることは不可能である.言い換えれば,日本社会を考察する一つの切り口がピアノ文化とも言える.ピアノ文化を通して日本社会の特質を垣間見ることが可能なのである.本報告では,戦後日本のピアノ文化に生じた,あるいは現在生じている様々な問題や,ピアノ文化が持つ潜在的な意味を把握し,現代日本のピアノ文化を多側面から考察する.

 

松本彰「鍵盤楽器の社会文化史―「音律の世界史」と西洋近代」

 ヨーロッパでは、ピアノ以前に長い鍵盤楽器音楽の歴史があった。1400年ごろにオルガン、チェンバロ、クラヴィコードという三つの鍵盤楽器が成立し、豊かな伝統を蓄積していた。ピアノは1700年ごろ発明されたが、現在のような鋳鉄の枠にピアノ線と呼ばれる鋼鉄線を張った工場生産された楽器(モダンピアノ)が成立したのは、産業革命による技術革新の後、19世紀半ばだった。

モダンピアノの歴史は150年、ピアノの歴史は300年、鍵盤楽器音楽の歴史は600年ということになる。18世紀は、四種類の鍵盤楽器が「クラヴィーア」とされ、並行して用いられていた「鍵盤楽器音楽の黄金時代」だった。

鍵盤楽器の歴史を考える上で重要な論点の一つは、鍵盤楽器の整律=調律法(音律)の歴史である。マックス・ヴェーバー『音楽社会学』は、その歴史を「西洋に特殊な合理化」として問題にし、詳細な分析を行った。

 20世紀後半には古楽器(オリジナル楽器)による演奏が盛んになり、実際の演奏で歴史的音律が用いられ、「音律の世界史」が問題とされている。

ヨーロッパの長い、多様な鍵盤楽器の歴史、そして古楽器演奏の現在を紹介し、ほぼ100年前のヴェーバーの問題提起の意味を問い、議論の糸口としたい。


 

◇忘年会のご案内◇
シンポジウムの後は、恒例の「大忘年会」となりますが、今年は趣向を変えて、国立ならではのお洒落なお店で催すことにしました。
どうぞ、こちらにも奮ってご参加ください。
時間:18時〜20時 場所:AZ DINING ピッツェリア国立店
会費:3000円(学生2000円)

 

* 次回の例会は3月、見市雅俊氏によるご報告の予定です。詳細が決まり次第、改めてご案内申し上げます。



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<2018年>
11月17日 田村俊行氏
12月16日 シンポジウム・忘年会
3月    見市雅俊氏

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