第254回「歴史と人間」研究会

日時: 2017年7月1日(土)14時より *土曜日ですのでご注意ください。

場所: 一橋大学西キャンパス本館特別応接室
 (キャンパス地図10番 http://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/campus/index.html

報告: 森 宜人氏

タイトル: 「近現代ヨーロッパ都市史における『長い20世紀』」

要旨:
 近現代ヨーロッパ都市史における近年の重要な変化として、「長い19世紀」に代わって「長い20世紀」を対象とする研究が着実に増加しつつある点を指摘することができる。また、これと軌を一にして、「新文化史的アプローチ」や、トランスナショナルな比較史が方法論上の主流となりつつある。こうした潮流を把握する上では、既存の研究成果を広範に駆使した通史が1つの有用な手がかりとなる。管見の限りでは、近年出版された複数の通史のなかで、上述の方法論を反映させつつ20世紀都市史について最もまとまった概観を提示しているのは、F. レンガーが2013年に上梓した『モデルネのメトロポリス―1850年以降のヨーロッパ都市史―』(Friedrich Lenger, Metropole der Moderne. Eine europäische Stadtgeschichte seit 1850, München 2013)である。
 同書では、分析対象の1850年代〜21世紀初頭が次の3局面に区分される。(1) 1850年代〜19世紀末の「自由主義市民のモダニティ」、(2)19世紀末〜1960年代の「オーガナイズド・モダニティ」、(3)1970年代以降の「ポスト・モダン」。この時期区分は、自由と自律性を基調とするモダニティの言説によって構築される社会的制度・慣習が、その時々の歴史的コンテクストにおいて多義性を帯びてきたことに着目する歴史社会学者P. ヴァグナーのモダニティ論に依拠したものである。その中核をなす「オーガナイズド・モダニティ」には、福祉国家およびファシズム体制だけでなく社会主義体制も含まれるため、レンガーの議論でも、ロシアを含む東欧諸都市も分析対象となる。そして、このことは、「ヨーロッパ都市とは何か」というM. ヴェーバー以来の根源的な問いに逢着することとなる。
 このように『モデルネのメトロポリス』では、「オーガナイズド・モダニティ」の形成・展開から「ポスト・モダン」へといたる都市社会の変化を経糸として、また、「ヨーロッパ都市」とは何かという視点による北西ヨーロッパ諸都市と東欧・ロシアおよび南欧諸都市との比較を緯糸として、「長い20世紀」のヨーロッパ都市史が織りなされる。その歴史像は、経済史や、社会史、人口史などの実態分析はもとより、「新文化史」的アプローチによる文芸批評や、視覚表象、造形芸術、集合的記憶などをめぐる言説分析によって得られた知見も豊富に反映させた多彩なモザイク模様を呈している。本報告では、このようなレンガーの「長い20世紀」都市史像を、近年の都市史研究の重要なトピックである「都市とモダニティ」、「都市ガバナンス」、「都市空間と公共圏」の3つの論点に即して検討し、今後のヨーロッパ都市史研究のあり方について考える糸口としたい。

 

* 次回は9月、見市雅俊氏によるご報告の予定です。日程等、詳細が決まり次第、改めてご案内申し上げます。



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